硫黄島からの手紙

投稿日:

ニノの様子を知りたくてここをご覧になった方、スミマセン。
今回は、舞台挨拶のレポを書くことなんて、できません。

「見るんじゃなかった」
これが私の感想です。

泣くとか、泣かないとか、そういうレベルで何かを語ってはいけない映画です。
これは、「人として生きる」とは何か?「正義」とは何か?「正しいこと」とは何か?
などといった、自分自身の「生」の根底にあるものを問われる話しです。
ただ、自分には「人の命の重み」を受け止め、消化する力が無いことがありありとわかり、映画の2時間が例えようも無いくらいつらく、苦しく、長く感じました。
それはまるで、『黒くて大きな感情の塊』を自分の口の中にねじ込まれ、それを飲み込まなきゃいけない状況。
どうやったら、それから逃げられるのか???
早く終わってほしい。
早く解放して欲しい。
助けて欲しい。
光を浴びたい。
もう、イヤだ、もう、こんなのイヤだ!!!!

2時間で、硫黄島の兵士たちの何千分も、いや、何万分も軽いかもしれないけれど、苦しみを抱えながら見ていました。
もっと、端的に言うと、「いっそのこと死んでしまいたい」だとか、「投降したい」といった気持ちをすんなりと身をもって体験したというか。
とにかく、息詰まる空間に吐き気と冷や汗と頭痛とに堪えながら、早く電気がついた明るい世界に戻れることを願っていました。
つまり、私が私の全身をもって、この2時間21分を「拒絶」しています。

それほど「戦争の恐怖」や「無益な死」を忠実に表現している映画だということです。
泣かせる演出も感動的なシーンも派手な音楽も、何もありません。
ただただ、多くの人間の命が尽きていく、その模様が映し出されています。
だから、、、この映画を、私は人に勧めることができません。

私は二宮和也のファンです。
ファンでなかったら見に行くはずもなかった映画です。
彼が舞台挨拶に来るというので、見に行く事を決めた程度の愚かな人間です。

でも、後悔しました。
ものすごく、後悔しました。
見ないでいいなら。興味が無いなら。あえてこんなツライ思いをしなくていい。
自分で自分がどうしようもなくなるくらい、翻弄されなくていい。
楽しいお話しなんて、世の中にいくらだってあるんだから。

そして、この映画を観るのなら、いっぱい考えて、苦しんで、泣いて、吐き気と嫌悪感と焦燥感と恐怖感と戦って、、、言葉は悪いですが、「観た事を後悔するくらい」真摯に映画と向き合ってほしいのです。
クリント監督が言った「娯楽じゃない。」という言葉。まさにその通りです。
この映画をエンターテイメントとして捉えてはいけません。
これを見て、「あー、すごかった〜!」などと、大して感想も意見も持てないのなら、見るべきではないと思うのです。
映画を見終わった後「ニノ、かっこよかったね〜〜」なんて感想しか述べれないなら、それは見た価値が無いのと一緒ですよ。
もっと言うと、夏コンのとき、会場で流れた予告を見て、「ニノ、かわいい〜〜」なんて言ってた、バカなジャニヲタには一切見ないでもらいたい。
それくらい厳粛な敬意を払ってしかるべきものだと思うから。

平和ボケした日本で、政治にも無関心で、ただただ「自分としての生き方」のみに興味を抱く「超・自分ご都合主義」の私ですら、「国」「国家」「国益」「戦争」「天皇」の意義を考えてしまう。
憲法9条改正案や、いじめにより失われる命や、多くの国策に無関心ではいられなくなる。
そして、自分自身が生きる「糧」として選んだ「情報配信」について、考えさせられる。
正しく情報が伝えられていたら、一体、何人の兵士が無駄死にせずに済んだことか・・・。

この時代の「死」は、生きた果てに自ずと訪れるものじゃない。常に「生きる」こととの引き換えです。
「生きる」ためには「殺さねばならない」。
そして、「自身の尊厳」のためには、自ら「死」なねばならない。
しかし、それすら自分の意志ではままならない。
自分の「生」と「死」ですら、何かの支配下にある。
それが、「戦争」というもんなんだと、実感させられます。

今の私は、映画が表現した「事実」の前に成す術もなく打ちひしがれるだけの「でくのぼう」。
何の力ももたない、時代の流れに身を委ねてしまっている一般人です。
だからこそ、怖いんです。そういう人々が自分の意志無関係に時代の流れに巻き込まれていくんだから。
これが、わずか61年前の日本の「事実」だから。
作り話じゃないから。
「自分の子供には、(戦争の事を)話したくない。この映画も見せたくない」
と言ったニノに、心の底から私も同意します。
人をこんな気持ちにさせる、こんな事象は、この世の中から抹消すればいい。

やはり、私には重すぎた。

いろいろご心配をかけてしまっていますが、、、
今日は姉・miyukingがお迎え+泊まりにきてくれています。
大丈夫です。
ご飯もちょっとは食べれています。

この映画に関しては「ニノ」がどうだったとか、、、そういう視点でモノを書くつもりもなく、
そうしてはいけないと思います。
だから、しません。
そして、私の硫黄はこれをもって最後にします。