眠たい瞳のサトシくん

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ちゃんとしたものは、あとから絶対に作りたい。
でも。
ひとまず、書いておかないと忘れてしまいそうなので、取り急ぎで書き連ねておきます。
誤字脱字はありまくりです。
ぜーんぜん、読み返してません。

凪ちゃんはサトシ兄でしたが、カーテンコールにいたのは、サトシ弟で、さらに、「眠たい」バージョンでした。

ちょっと待て!
1分前まで舞台であんなにきりっとした姿を見せてたくせに、これはなんだ??

あまりの変わりようにびっくりです。
終わったら急に眠気が襲ってきたのか??

隠すこともないかもしれませんが、念のため。

--あらすじ--
「開門!凪様、ご帰還!!門を開けーい!」
重々しい叫び声を合図に門が開くと、刀を背負った若者がゆっくりと歩いてくる。織田の軍勢をたった一人で壊滅させ、その大将の首を土産に城へと戻ってきた兵の名は、凪。織田と敵対する山城不動の配下の一人だ。
主君・不動の妻であり、凪の妹でもある、りんと対面したとき、凪は隠し持っていた短刀で、不動に切りかかった。

凪は不動によって滅ぼされた国の若君。父母を殺された仇を討つため、人質に取られた妹を救うため、自ら不動の手先に成り下がりながらも、宿敵・不動殺害を悲願として、修羅の道を生きていた。
隙あらば不動を倒し、りんを連れ出そうとする凪だが、不動にはまったく歯が立たない。地べたに這いつくばる凪を嘲笑って、不動は言う。
「俺を倒したくば、ここまで這いあがって来い。強くなれ。」

そんな凪に駆け寄るのは、陽炎。凪に仕える女忍だ。血に手を染める凪を守る事を自らに課し、共に歩むことを誓う陽炎だが、凪は「俺にかまうな!」と突き放す。
落胆する陽炎の前に、行き倒れ寸前の坊主・仁雷が現れた。陽炎が仁雷に情けをかけたことで、すっかり仁雷に惚れられてしまい、後々付け回されることに。

そんなある日、城内に一人の年老いた占い師が連れてこられた。占い師は不動を見て言う。
「死相が出ています。死の原因は獅子身中の虫。山に月が二つあらわれるときをお気を付け下さい。命が消えるときです。山を持つ名の人は、山が崩れると己も滅びる。決して山には近づかぬように。」
戯れだと捨て置き、去って行った不動だが、凪はその老人が若者であることを見破った。
一体何者だ??
飄々と動き、得体のしれないヤツを追いかけていると、仁雷が行く手を阻む。仁雷は凪に殺された兄弟・師匠の仇を討つため、凪を探していたのだ。凪に切りかかろうとしたそのとき、陽炎が飛び込んできた。陽炎と、陽炎に夢中な仁雷との騒乱の中で、侵入者をすっかり取り逃がしてしまうことに。

不思議な歌を歌う、りん。不動の亡き母が残した歌を口ずさむりんに、心が慰められる不動。
そんな穏やかな一時も束の間、新たな戦いの武器・鉄砲到着の知らせが舞い込んだ。それを見て不動は次の戦を思いつく。風神が住むと恐れられる山、神ノ岳攻略だ。

凪に命じ、神ノ岳に向かわせると、そこに現われたのは、この前のインチキ占い師。神ノ岳を住処とするそいつは、人に荒らされないよう、霧と影を利用して風神の幻影を見せ、人を山から遠ざけていたのだ。なぜならそこには、不動の父が残した隠し金山があり、『そいつ』はその金を使って世の中に平和の風を吹かせたいという。
ひょんなことからそれを知ってしまった、凪。
生死を掛け、勝つために、闇雲に剣を抜くことしか知らない凪に『そいつ』は言う。
「勝つのではなく、負けないことだ。戦わなければ、負けはしない」と。
さらに、「世の中に平和をもたらす風になりたいんだ。友達になろう。そして、一緒に風になろう。」

『そいつ』にすっかり調子を狂わされてしまった、凪は久々に笑った。
両親を殺され、家を断絶されて以来、心を鬼にしてしまった凪が久しぶりに笑った。

そのころ、不動は夢を見ていた。
力を持ちすぎた自分を恐れた父に襲われ、逆に殺してしまったことを。それを母に見られ、母がその場で自害したことを。
夢の中で思い出していた。「親殺し」という己の血がもたらす呪いに恐れる不動は、決して子を持たないことをりんに告げる。

神ノ岳から凪が帰還した。
金のありかに感づいていた不動は、その話を聞きたがっていたが、友達の住む山の事は話せない。業を煮やした不動はりんを盾にし、凪に詰め寄る。
「お前の力を示したくば、3日以内に難航不落の砦を一人で落とせ」と。

不動の無理な申し出に、凪は神ノ岳の『そいつ』の知恵を借りることにする。何もしらない『そいつ』は凪のために知恵を授けた。
「木火土金水」
自然の摂理を利用する兵法だ。
凪は教えられたとおり、川を堰き止め、砦を水で押し流してしまう作戦に出た。
ところが、川の水が押し流したのは、民百姓が住む村だった。それは凪の真意を試した不動の罠で、もともと砦などなかったのだ。
罪なき人を殺してしまった罪の意識で押しつぶされそうになる、凪。

落胆しきった凪の前に、『そいつ』は現れた。
「俺の知恵で、オマエは!オマエは何をやった!!!」
陽炎は瀕死の怪我を負い、友達を失い、民・百姓を皆殺し…。
何もできない、何をしていいのかわからない。自暴自棄になった凪は、母の命日を弔う不動に鉄砲を放つ。

囚われの身となり、処刑される寸前に現れたのは、怪我をおして助けにきた陽炎と、今や陽炎の手足となって動いている仁雷だ。
さらに、陽炎から凪の両親の事情を聞いた『そいつ』もやってきた。

『そいつ』はりんを救いだし、大凧に乗って神ノ岳へ向かった。凪・陽炎・仁雷は山道で神ノ岳へと逃げようとするが、深い傷を負っている陽炎には負担が大きい。
「今、若がここで捕まっては、おりん様を取り戻さなければ、今まで若の手にかかって死んでいったものが、浮かばれません。どうか、私はここに置いて若は神ノ岳へ!!」
仁雷に凪の護衛を託し、座り込んだ陽炎を狙って、不動軍が現れる。
危険を察して引き戻ってきた仁雷は、深手を負った陽炎を守り戦うが、多勢に無勢。陽炎も自らが持っていた火薬と共に最期を遂げる。
火薬が花火となって空に上がったのを見て、二人の死を悟る凪。悲しみをこらえ、前へと進む。

神ノ岳の洞窟で凪も合流し、『そいつ』と二人で作戦を練ろうとしていたときに、りんがある事を思い出す。『そいつ』こそ、自分を不動のもとへと運んで行った張本人。不動の抱える暗殺集団「虫」の一人だと。
『そいつ』の名は「虱」。かつて不動が飼っていた虫の一匹であった。不動は虫を使って、さんざん汚い仕事をさせた挙句、皆殺しにしたのだが、そのとき1匹残ったのが、虱だったのだ。今となっては、剣を放棄し、平和を願う虱だが、虱こそ凪の宿敵。

もう、何も信じられない。
不動に対し、一人で突っ込んで行く凪。もはや虱が教えようとする戦略に聞く耳をもたない。そして凪の剣は不動が教えたものだ。すべて不動に読まれてしまう。
それでも、凪が放った、最後の一太刀。討取ったと思えたが、不動が身に付けていた楔帷子で、阻まれる。
唖然とする凪の隙をついて、不動が襲いかかって来た。とっさの事に応戦が遅れた凪をかばって、虱が倒れた。
「風になってくれ。あと、この山、オマエにあげる」
そう言い残すと、虱は息絶えた。虱は友達だったのだ。過去はどうであれ、今は友達だったのだ。

陽炎・仁雷・虱。
大事な仲間を殺された凪は、虱の言葉を思い出す。
「木火土金水」
鎖帷子を付けた不動もろとも湖に落ちる凪。水の中では鎖帷子は重い。空で光る月と湖に映る月。虱の予言通り山に月が二つ揃ったこのときが、不動が死ぬ時だ!やっと不動を倒せるチャンスが来たと思った瞬間、何もしていないのに、いきなり不動が崩れ落ちた。
不動の体は病魔にむしばまれていた。不動にとっての「獅子身中の虫」とは、胃が腐っていくという、自らが冒された病だったのだ。
太刀を浴びせることなく、死んでいく不動。

なんのために今まで戦ってきたんだ。何のために仲間を失ってきたんだ。

そんな凪に向かってりんが言う
「バカなお兄様」
不動のもとに捕らわれて7年。その間に、りんは冷酷非情な戦国の世に染まりきっていた。不動は自分の後継ぎとして凪を育て、いずれはこの国を凪に渡すつもりにしていた。だが、そうはさせない。自分がこの国と不動の首を献上して、織田の配下に入る。と、りんは言う。


右の申 左に示し
頂きすべって蓋の穴
鏡に映る黄金虫
仏の昼寝に 天つ風吹く
仏の昼寝に 天つ風吹く

不動の母が歌い、りんが口ずさんでいた曲は、金山のありかを示す暗号だった。
この金を使い、ここに強靭な国を作るというりん。
凪も歌を口ずさんでいたときに、ある事に気づく。
「この歌にはまだ意味がある!」

そこに同盟を結んだ織田の軍が侵攻してきた。不動を裏切ったりんもまた、織田に裏切られていたのだ。虱が凪に残した山で暴れる侍。
凪にとって、今もっとも守るべきものは、虱が残してくれた、この山だ。

「見てろ、虱!!今、風を吹かせてやる!!」
洞窟の奥の仏像を横に倒すと、轟音とともに金山が崩れ出した。

織田軍・不動軍もろとも山と共に崩れ、すっかり形が変わった頂きに凪とりんがいた。金に執着し取り乱すりんに向かって、
「これが、俺が人を斬る最後だ!」
と、剣を振る凪。
でも、りんには何一つかすってはいなかった。
「これでお互い自由だ。もう兄でも妹でもない。俺はこれがあれば十分。」
虱がいつか、海に出たいと願って作った船の帆。「風」と書かれた布の左が破れ、「虱」となった文字を首に巻く凪。
すくっと立ち上がり、振り返えると、もう「凪」はいない。
「風」となり、新たな一歩を踏み出した「風助」がそこには、いた。


--感想--
まず、「かっこいい」とか「素敵」とか、そういう言葉がぐわーっと連なった後で、「尊敬」「崇高」みたいな言葉に近い、どうしようもなく苦しいくらいの感情の高ぶりがあって、最後に非常に強い「ときめき」が訪れる。
そんな感じ。

何せ、圧倒的な迫力とスピード感。
舞台上でポンポンと飛び出す話の流れを追っかけながらも、悲しみを背負い笑うことなく生きていくサトシのストイックな表情にのめりこみ、自分の中に訪れる感情の波があまりにも「凄かった」(陳腐過ぎるけど、ボキャブラリーの限界)のです。

心を鬼にして人を斬り、望まざる事に必死に邁進していく悲哀。
修羅の道を歩むことを決意しながらも、その痛みや悲しみを、凪は全身で表現して伝えてくるのです。
1度だけ笑う時ですら、笑い方を忘れたかのように、ぎこちなく笑うわけで。それがまた、痛々しい。

これまでのプーシリーズと、全然違うと感じたのは、そういうところです。
「笑う」「困る」「泣く」「怒る」という簡単な感情要素だけで構成されているのではなく、情景や心象からにじみ出てくる感情がグッと詰まっているからこそ、見ている側がグングン引き込まれていくのです。
その細かい感情が凪の体から、強力に発信されていて、それはまるで増幅アンテナのよう。受信する側である観客にすると、その電波をまともに受け取ってしまうわけで、非常に揺さぶられるのです。

また、役者の感情を、より分かりやすく伝えたり、情景の表現を支えるのが音楽と演出だと思うのですが、今回は、それがびっくりするぐらい凝っていました。
特に、川のシーンの水の流れに息をのみました。本当に濁流に巻かれ、飲み込まれ、もがき苦しむ姿にリアリティーを見てしまったのです。
お芝居って、映画と違う訳で、表現できる幅に限りがある中、水の重みや苦しみがリアルに伝わってきたのは、びっくりでした。
それだけでなく、今回はシチュエーションごとの照明による効果が非常に印象的。
最初の帰還シーンもそうですし、森の中、水の中、金山、、、さまざまなシーンの印象がこんなにも違うんだというのが、鮮明に感じ取れて、それが非常に新鮮でした。

観終わって、ものすごく疲れていました。
こんなに集中して見た舞台は久しぶりかも知れません。目が離せない、手に力が入る、肩もこる。
それくらい、見ていて色んな発見や感じ方をしたのです。

ストーリーとして泣ける山場は、陽炎が若と離れるところから、山が崩れるまでのところ、、、仲間が減っていき、凪が虱の残してくれたものを守るために戦うところだと思うのですが、私は最後の最後。凪が風助になるところで、かなりウルっときました。
虱の布を首に巻き、客席の方に振り返ったとき、そこにいるサトシは凪の顔ではないのです。未来を見つめた穏やかで和やかな、そして優しさと強さを備えた顔立ちなんです。その姿の美しさと佇まいに、グワーっと感動したのです。

演目が決まってから、いろんな意見が飛び交っていたプーですが。
私はこれが「有終の美」である事を祈っています。
これがあまりにも素敵だったから、ここで終わってほしい。
次は違うサトシが見たい。
そう思うのです。

生で見る楽しみ、醍醐味がぎゅっと詰まった舞台に出会えて、今年の初嵐がサトシで、本当によかった。
ありがとう!お疲れさまでした!!!