狂気を操る人

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ニノちゃんの舞台、行ってきました。
すんごい、楽しかった。
舞台もですが、久々の仕事でない東京だったり、友達に会えたり、食べ物がおいしかったり。
マッスーの舞台のフライヤーが可愛かったり(超このみ〜〜〜!!!)
なんだか、実り豊かな東京詣でございました。

jさん、aちゃん、yちゃん、ありがとうです!

舞台の感想はこちらに・・・・

ここに書く言葉はあくまで、ニノが好きである。というのが前提です。
ニノのお芝居を否定するとか、そういうものではないので、ゆっくり読んで頂けると、うれしいです。


好きなお話って、好きになる要素があるんだと思う。
・ストーリー
・主人公
・空気感
・演出
そのときどきによって、その要素がどこに当てはまるのか分からないんだけど、そういうものがあって、好きになるんだと思う。

ところが、、、今回の舞台。
私が観たのは1回です。
その1回を死ぬ気で目をこらして凝視したのですが、この中では、「私が愛すべきもの」が見当たらないのです・・・・。
逆に言うと、嫌悪感とか、後味の悪さ、焦り、苛立ち、不気味さ。
新雪を踏む足跡のごとく、気持ちの中でぐさぐさと何かが踏みつけられ、心のなかが落ち着かない。

それというのは、翻訳劇だからっていうのが、大きいのかも知れません。
自分の中の尺度と全く違うところで、「愛」だ「正義」だ「罪」だ「欲」だと語られているわけで、その中で、主人公がどんどんおかしくなって行く様子が表現され、それに振り回される人々の苦しみを見せられても、イマイチ、咀嚼できないのです。
それが自分の感覚と合っていればこそ、そこに説得力があるんだろうけど、どうにも納得できない、、、自分の琴線と、どんどん乖離していき
「ひどく頭痛がするの。少し治まったりしても、またひどく痛みだすの。」
という、エルシーの言葉がそっくりそのまま自分に当てはまるくらい、なんだかとっても、イヤな感じの話なのです。

だってそもそも。
このお話の根底にあるのが、この話がアメリカで生まれ育った人間の感情を表現しているんだもの。
「僕のこと好きだから、警察に突き出せないんでしょ」「なぜなんだ、僕は君といるとなんだか混乱する」「私にはすべてを話してちょうだい」・・・うーん。なんだか、実に、欧米的。
ストーリーとしてはそうなのかも知れないけれど、その感情って、日本人としてどうにも理解しがたいものなので、普通、カルチャーショックを受けるところだったりするのですが、それが前提条件であるがゆえに、こっちの準備とか心構えとかにはお構いなく、前面にぐいぐいと出てくるのです。
そう、感情がおしつけがましい。

その中でも特に私が嫌悪感いっぱいになってしまい、受け入れられなかったのは、ブルーノの感情です。
もう、私には、なにがどうして。ブルーノが気持ち悪かった。
最後、死んじゃうところを含めて、何もかもを否定したいくらいに気持ち悪かった。
子供なのか大人なのか頭いいのか悪いのか何が不満で何をしたいのか。
まったくつかみどころがないまま、ただ酒に浸り、ガイを振りまわしていく姿が、どうにも腹立たしくって仕方ないのです。

それは多分、この舞台としては、正解の一つだとは思うのです。キュートでチャーミングなブルーノでは全然意味がなく、そこまで徹底して「理解不能な気持ち悪い人」をやりきるからこそ、ガイが壊れていく様や破滅へと向かう部分が意味をなすっていうのは、分かるのです。
そして、それくらい、やりきった演技をみせるニノは、鳥肌が立つくらいの気持ち悪さを表現していて、思い出しても腹が立つくらいのものでした。
人の感情を、役者として演技でそこまでざらつかせるというのは、凄いことなのだと思うのです。

ニノが狂気に触れるお芝居は、これが初めてではなく、過去と現実が交差し、どんどん錯乱していく「シブヤから遠く離れて」で、見ていたものなのですが、今回の狂気はシブヤのそれとは違って、納得できる狂気じゃないってのが、自分的な敗因です。
ナオヤはどこか「寂しさからくる、かわいさ」的なものがあって、その寂しさから犯す殺人やモノへの固執に同情してしまうところがあり、また人間らしさを感じるのですが、ブルーノは人間的に魅力がない(というか、そもそもの性格がどんなものなのかがよくわからない)くせに、罪ばかりを重ねた、迷惑なうっとおしいヤツ!なのです。
なんだか、そんな感じなのです。

ただ、先ほども書いたとおり、それくらい、壊れきったブルーノ役をやりきったニノは、とっても素晴らしいと思っています。
ただ、、、悲しいかな。それは私にとって、愛せるキャラクターではまったくなかった。

あぁ、、、なんていうのだろう。
茶碗蒸しもプリンも好きだけど、和食には茶碗蒸ししか合わないように、ニノの演技の凄さや迫力は圧巻だったものの、舞台としては、好きになれない。
そんな感じでしょうか。

とにかく。めちゃめちゃ疲れる舞台でした。
1回でよかった。
多分、2回続けては観れないな。