感情の振れ幅

この3連休は、移動して、嬉しくて、悲しくて、楽しくて、つらくて。
そんな日々でした。

土曜日、冷蔵庫の修理をしてもらうために、業者の人が来るのを待っていたら、母から電話があり、実家で飼っている柴犬の具合が悪く、入院したとの知らせでした。
今年のお正月以降、脳溢血(首の傾きなどの後遺症あり)、膀胱ガン、腎盂炎、歯周病などの病気を次々と患ったウチのワンコですが、ガン以外は完治し、ガンも抗がん剤の効果で相当、進行が遅れていると、良い話を聞いていたところ、、、ここにきて心臓の弁の筋肉が、老化によって衰えてしまい、一時的に呼吸困難になる症状が出たそうです。
そして、その症状が深刻なため、酸素テントに入ったうえで、投薬と食事制限による入院治療を行うものの、3日間の入院で成果が出ない場合、治療方針を投薬に変えることになり、それは延命ではなく、あくまで痛みや苦しみの緩和の治療となり、そこからは自宅で見てあげてほしいとのことでした。

ワンコもそうですが、その話を聞いて気落ちする母のほうも心配で、昨日の早朝に新幹線で実家に戻り、その足で動物病院に向かいました。
心配していたのがウソのように、元気に立ち上がって、尻尾をビュンビュンと振り、迎えてくれました。本当にホッとして、重たい気持が一気に晴れ、やっと食欲も出ました。
土曜日からそのときまで、ほとんど何も口にできなくて。
病院の先生の見解では、火曜日には元気に自宅に戻れそうだということで、動物病院からの帰り、母と二人でペット用のキャリーカートを買いに行きました。これなら、散歩中に苦しくなったら、いつでもカートに乗せて休ませてあげられるし、定期的に外に連れ出してあげるのも、ラクチン。
家に帰って早速組み立て、寝床も外の物置から、玄関に移し、暑さ・寒さの対策もほどこし、火曜日の退院に向けて、出迎える準備はバッチリ整えられました。

そして、今日。
大阪に帰る前に、どうしてもやはり会いたくて、再び動物病院へ。
病院に入ると先生が「調子、良くないんですよ・・・」と、暗い声で言うので、あわてて酸素テントを覗くと、昨日とはうってかわって、ぐったりとしてしまい、頭を上げることもできない様子。
先生が言うには、明け方に激しい発作を起こして、せき込みが続いたとのことで、体力が奪われてしまったそうです。2日目になって、この状態ということは、症状が改善できていない可能性が高いらしいのです。
明日、症状が改善されても、ダメでも退院ですが、、、ダメな場合の退院は、考えるのもツライものです。
キャリーカートに乗せてあげることすら、できないかもしれない。
14年、家族として暮らしてきたのです。
もう、あまり長くないことは察していたとはいえ、やっぱりやりきれない。なんだか、寂しくて病院から駅に向かう車の中は重たい空気なうえに、些細なことで母ともケンカする始末。
明日、とにかく病院の先生の判断を聞いてみるしかありませんが、、、どうかうちの子の心臓を治ってますように、、、と祈るより仕方ありません。

そして、今日は楽しみにしていた堂島孝平・NONA REEVESによる、「ファンタスティック・アカデミー」ツアー。
足取りは重たいものの、開演前には友達とお茶したり、おしゃべりしたり。
そして、変わらずその空間は楽しくて・・・。
心にちょっとだけ残るやりきれない思いさえなければ、本当に楽しかったんだ。

堂島君の楽曲で「なんて悲しい歌聴いてるんだろう」というのがあって、この曲を聴くと、2004年の寒い春の日のことを思い出します。
一人、東京に行き、この曲を聴きながら渋谷の街を歩いたこと。
その時見た、ニノの「シブヤから遠く離れて」の幻想的で寂しくて物悲しいお話。
そのときのニノがうちのワンコの背中とそっくりの雰囲気だったこと。
ものすごい難解な舞台だったけれど、見終わった後に残ったのが、どうしようもなく消化できない重たい感情で、その時の自分には堂島君のこの曲がハマりすぎていて、怖いくらいだったのです。
その曲を再び聴いたとき、私は同じように消化できないくらい、暗く重たい思いがあって、それを見透かしていたかのように、ぶつけられたこの1曲が、私がこのライブにやってきた意味だと感じました。

結局、どうすることもできない。
最善は尽くしたと思う。これ以上のことはできなかったし、できることはやったんだ。
だから、、、仕方ないけれど、時間を経過していくことを、その状況を受け止めなければ、人間は生きていけない。
「シブヤ・・・」でテーマに挙げられていたのは、「現前化できない愛」だったが、人間は「現前化(終りがあるから今がある、人間は死ぬために生まれてきたとするハイデッガーの理論)」するという前提で生きている。終わりがない今なんて、ない。死がない生はない。

そういうことをぶつくさと考えながら、私は涙をぐっと押し込めるようにして、この1曲を聴き入ったのです。

なんか思考回路のぐちゃぐちゃさを露呈したニッキになってしまいましたが、明日を迎える覚悟が決まったということです。
ウチのワンコの運命を決定する13日って日を迎えることを受け止める気持が持てたということです。

数年前は常に耳元に流れていた堂島くんの声から少しずつ遠ざかっていたのは、本当です。たまにiPodから流れたときに聴く程度になっていました。自分から好んで聴くのはNONAのほうが圧倒的に多いですが、今日、このタイミングでこのセットリストにしてくれた堂島くんに本当に感謝するとともに、その歌声が前となんら変わらなく自分の心に沁み渡ることが確信できました。
泣きたくて、懐かしくて、せつなくて、やるせなくて、もどかしくて、でも愛しい。
曲でそんな感情を引き起こさせてくれる人だっていうのは、重々知っていたはずですが、その実力で久しぶりにねじ伏せられたような気持でした。

さて。明日の準備をして、寝るとします。